三井住友銀行が総合職と一般職を統合するという、人事制度改革に着手しました。
2020年1月の実施を目指しているそうです。
総合職はその企業における幹部候補としてゼネラリストを育成していくこと、一般職は地域・職務限定で定例業務に熟練したスペシャリストの育成が目的でした。
総合職と一般職を統合し、制度の垣根をなくす目的は何でしょうか?
その社会的背景をまず確認してみたいと思います。
社会構造の変化① 人口の減少
日本の労働市場は現在人口の減少によって労働人口が減り続けています。
外国人実習生の受け入れなどもその背景を映し出していると言えるでしょう。
人口減少によって一番懸念されることが、現場作業の停滞です。
銀行で言えば窓口業務を行う人が少なくなり、一人の人が5の仕事をしていたものが10しなければならなくなってきています。
現場作業に負担感が増すと、長時間労働の原因となり、それがさらに退職の引き金となってしまいます。
従業員の退職はさらに現場の負担感が増していき、従業員の減少によって企業はいずれ経営を維持できなくなります。
このように人口減少に対応するためには業務内容の改善により、従業員数が減少しても一人当たりの仕事量は変わらないような業務効率化をすすめていく必要があるのです。
そのことが端的に見えるものとして、今各銀行では支店単位で行っていた為替業務を本店の事務センターに集中処理する流れを作っています。
人口減少によって現場従業員数の縮小に対応した対策と言えるでしょう。
社会構造の変化② IT化
預金の払戻一つをとっても以前は銀行の窓口まで行き、払戻請求書に署名・押印して手続きすると言うのが普通でした。
しかし、今は銀行に設置してあるATMをはじめ、コンビニエンスストアのATMでも払戻が可能です。
また、振込でも今はスマートフォンやパソコンから操作すれば簡単に振込ができます。
これはIT(情報技術)の進展によって、ネットワークで銀行とお客様のスマートフォン・パソコンがつながり、このようなことが可能になったのです。
言い換えればこれは、銀行のお客様は窓口に来店する必要がなくなるということ。
IT化によって従来あった窓口での預金入出金や振込といった為替業務は縮小の一途をたどっていきます。
つまり、IT化によって従来の仕事は確実に減っていくことになるのです。
総合職・一般職統合の真意
以上の背景から、事務集中化やIT化によって各支店には人的余力が生まれます。
銀行は、利益率の高い業務に余力を振り向けます。
ここで利益率の高い業務とは、資産運用など専門性が高い業務でお客様が契約してくれれば確実に手数料が受けられるものです。
そこで、一般職の社員にもこういった利益率の高い高度な業務についてもらう必要性が出てきた結果、一般職と総合職の業務内容に差がなくなります。
つまり、同一業務である以上、公平な処遇を行うために統合する必要性が出てきたのです。
今から私たちに必要なもの
以上のように、三井住友銀行の総合職と一般職の統合は時代の流れに沿って企業として生き残りをかけた変革だと言えます。
ところで、人間にしかできない仕事とは何でしょうか?
それは、お客様が満足する価値を生み出すことだと私は考えています。
ルーティン業務と言われる定例業務はIT化によっていずれコンピュータが作業するような状況になっていくことでしょう。
私たちの仕事がいずれなくなってしまうのでは? と心配になりますよね。
しかし、AI(人工知能)と言えども、作り出したのは人間です。
「あったらいいな!」を形にできるのは人間にしかできません。
つまり、IT化によりいくら定例業務が効率化されても、私たちが考えてお客様が満足するような価値を生み出す仕事はなくなりません。
三井住友銀行の人事制度改革はまさにこの視点が所属する社員に求められていると言えるでしょう。
そして、自分がしている仕事がmust(~しなければならない)ではなく、つねにwant(~したい)であれば、自分の満足を高められると思います。
ぜひ、これから仕事においてはwantの姿勢を持ち続けていきたいものです。
参考文献 日本経済新聞 2019年3月5日