日本経済新聞の報道によれば、2019年10月の消費増税の際に導入するキャッシュレス決済のポイント還元制度でクレジットカード大手の三井住友カードがポイント還元制度終了後も加盟店手数料率の上限を維持する方針だそうです。
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三菱UFJニコスも加盟店手数料の上限を維持する公算が大きいという反面、みずほ銀行系のUCカードグループは上限を撤廃する見込みだという事で各社ポイント還元制度終了後の対応が分かれてきています。
なぜ、このように対応が分かれてきているのでしょうか?
ポイント還元制度はシェア拡大のチャンス
このグラフは2015年度のカードショッピング取扱高のシェアを記したものです。
※出典 クレディセゾン「決算関連資料 2018年本決算」
https://corporate.saisoncard.co.jp/ir/data/
クレディセゾンを含めたみずほ銀行系UCカードグループが15.1%、三井住友フィナンシャルグループが14.8%、三菱UFJフィナンシャルグループが14.1%と三つ巴で拮抗しています。
2番手および3番手の三井住友FG、三菱UFJ FGはシェア拡大を図るため、今回のポイント還元制度を利用してクレジットカード決済高を高めたいという状況がうかがえます。
逆にUCカードグループはシェアの優位性を生かして不良債権につながらない優良な加盟店のみを残し、加盟店の選別を図る事で、決済リスクの軽減と更なるシェアアップを見込んでいると考えられます。
以上のような背景から、それぞれの思惑が重なってポイント還元制度終了後の各社対応が分かれてきているようです。
手数料率上限維持は中小店舗にとって朗報!
中小店舗にとって、キャッシュレス決済時にカード会社に支払う加盟店手数料がキャッシュレス決済導入の大きなネックとなっています。
ましてや、ポイント還元制度終了後に加盟店手数料が上がるようなことがあれば、店舗側としてはキャッシュレス決済から撤退せざるを得なくなるでしょう。
ここに、利幅を押さえて商品を販売している中小店舗がキャッシュレス決済導入に踏み切れない背景があります。
よって加盟店手数料の上限がポイント還元制度終了後も維持されるのであればクレジットカードの加盟契約をしようという動機付けになると思います。
その点では、三井住友カードの判断はカード会社および店舗側双方にとってメリットのある判断だと言えるでしょう。
まとめ
ポイント還元制度の目的は欧米諸国や韓国・中国と比べて圧倒的に低い日本のキャッシュレス決済比率を上げ、店舗利用者の利便性向上と訪日外国人のインバウンド需要に対応することです。
よって、制度が導入される以上、加盟店の拡大およびポイント還元制度終了後の加盟店撤退を防止し、その維持と更なる拡大を図っていかなければならないことは言うまでもありません。
加盟店・カード会社双方に更にメリットが向上していくよう、カード会社側は更に経営努力を重ねて加盟店手数料を下げていくことが必要だと思われます。
参考文献:日本経済新聞 2019年4月12日