2019年10月に消費税が8%から10%に増税されるのに伴い、国民の負担感を緩和しようと政府は2019年10月から2020年6月まで商品購入時に消費者に対し2%~5%のポイント還元を実施する施策を発表しています。
このポイント還元、注意しておくべき点が何点かありますので、今日はその注意点について確認していきたいと思います。
現金支払では還元されない
このポイント還元事業、実はクレジットカードやスマホのQRコード決済と言ったキャッシュレス(現金を使用しない)決済のみにポイント還元されるようになっています。
一見、増税による国民の負担感緩和というのがこの施策の目的のようですが、本当の理由は、諸外国と比較して著しく低いキャッシュレス決済の普及を図ることにあるようです。
よって、クレジットカードやスマホ決済と言った決済手段を持たない人はその恩恵を受けられません。
したがって、消費者がこの恩恵を受けるためには、クレジットカードもしくはスマートフォンを所有する必要があります。
そこで問題になるのが18歳未満の年少の方や60歳以上の方です。
18歳未満の年少の方はクレジットカードが持てないため、必然的にスマホQRコード決済しか利用できなくなります。
また、60歳以上の方は逆にスマートフォンの所有率が2017年の調査で48.2%(※1)と世代人口の半数ですので60歳以降の半数以上の方はQRコード決済が利用できないということになります。
以上のように年代によって利用できる決済手段がクレジットカードもしくはQRコード決済のいずれかに限られることになるので、決済現場での混乱が生じないよう、ポイント還元を実施する店舗はクレジットカードおよびQRコード双方の決済手段を準備しておく必要があると思います。
※1 出典:MMD研究所 2017年シニアのスマートフォン利用に関する調査
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1654.html
クレジットカードは加盟店ベース
現在このポイント還元施策に参加表明している決済業者は以下の10社です。
クレジットカード | QRコード決済 | タッチ決済 |
JCB | LINE | メルカリ(iDによる決済) |
楽天カード | PayPay | |
三井住友カード | Origami | |
三菱UFJニコス | NTTドコモ | |
クレディセゾン |
特に注意を要する点として、クレジットカードの決済については各店舗がこのクレジットカードの決済業者の加盟店として登録されていることが必要です。
たとえば、購入する消費者が楽天カードを所有していても、購入する店舗が上記の5社以外のクレジットカードの加盟店であれば今回のポイント還元の対象にならなくなります。
しかし、加盟店がどこのクレジットカード会社の加盟店になっているかというのは、店頭では判別つきません。
したがって、店頭でポイント還元の対象決済を取り扱っている旨の表示をしておかないと現場では必ず混乱が起こり得ます。
参加する店舗は決済手数料が発生
クレジットカードやスマホ決済と言ったキャッシュレス決済は消費者と利用店舗との間を決済業者が介在します。
決済業者は決済に必要な手数料を店舗側から徴収することで収益を得ているため、店舗側はこのポイント還元の施策に参加する際は少なからず決済業者に決済高に応じて手数料を払う必要があるのです。
政府は手数料の上限をポイント還元施策をしている間だけ3.25%にし、店舗側の負担感を和らげるようにしているようですが、そもそも利益率の低い業種は相応の負担となります。
キャッシュレス決済の普及が政府の目的であれば、この施策が終了しても店舗側はキャッシュレス決済を継続し続ける必要がありますが、決済手数料率3.25%の上限はポイント還元施策実施の間だけの上限であり、これが終了すれば決済業者は店舗の業種に応じて手数料を上げてくる可能性もあるのです。
店舗にとっては手数料がただでさえ負担であるのに、もし手数料率が上がるようなことがあれば、せっかくキャッシュレス決済を導入しても撤退していくところも出てくるでしょう。
せっかくポイント還元施策を実施する以上、実施店舗に対して施策終了後の手当てがしっかりなされなければ、ポイント還元の原資として投入する税金も無駄になってしまいます。
どれだけの店舗が新規で参加するかが鍵
先述のとおり、店舗には決済手数料が発生するため、手数料負担を嫌って参加しない店舗も出てくるかと思われます。
しかし、キャッシュレス決済の普及が目的ならば、この施策に参加する店舗が一つでも増えることが成功の鍵を握っていると言えるでしょう。
消費者が少しでもポイント還元を受けられるように、キャッシュレス未導入店舗への働きかけを今後政府・決済業者が取り組んでいかなければならないと感じます。
まとめ
以上、消費増税時のポイント還元施策についての注意点を確認してきました。
この施策の建前は消費税増税による国民負担感の緩和でしたが、本当の目的であるキャッシュレス決済の普及も喫緊の課題です。
確かに日本はキャッシュレス決済の比率が18.4%と韓国の89.1%や中国の60%と比べて著しく低く(※2)、外国人の観光来日が多くなった今日、対外的にも遅れた印象を与えかねません。
キャッシュレス決済の普及は、私たち消費者の利便性のみならず、将来的に日本経済がグローバルに恩恵を受ける大切な施策であることを認識して取り組んでいく必要があるのではないかと感じた次第です。
※2 出典:経済産業省 キャッシュレス・ビジョン
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
参考文献 日本経済新聞 2019年3月14日