KDDI・auが金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス」を4月1日に設立することが発表されました。
金融持ち株会社の傘下には、銀行事業の「じぶん銀行」、プリペイド決済事業の「ウェブマネー」、資産運用事業の「KDDIアセットマネジメント」に加え、三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の「カブドットコム証券」もTOBで傘下にすることを発表し、KDDIが本格的にフィンテック(金融技術)事業に参入することとなりました。
他の大手通信キャリアもフィンテック事業に力を入れており、この流れは今後も加速していくものと思われます。
なぜ、大手通信キャリアはこのようにフィンテック事業に注力しているのでしょうか?
通信キャリアとして参入する楽天の存在
楽天は2019年10月に通信設備を持つ携帯電話通信事業者として携帯電話事業に本格的に参入する予定です。
楽天の購買層のうち18歳から64歳人口の56%が楽天を利用しています。※1
この世代は同時に通信キャリアの顧客層でもあります。
楽天が実設備を保有する携帯電話通信事業者として参入してくれば、これら楽天の顧客層を携帯電話通信事業にも取り込むでしょう。
そうすれば楽天の携帯電話事業への参入によって既存の3大通信キャリアは自社の顧客を奪われかねません。
つまり、楽天の参入によって成熟しつつある携帯電話市場の顧客を4社で奪い合う構図になるのです。
※1 出典:ニールセン デジタル 18-64歳の人口の56%が「アマゾン」、「楽天市場」を利用 ~ニールセン ECサービスの利用状況を発表~
https://www.netratings.co.jp/news_release/2018/08/Newsrelease20180830.html
携帯電話市場の成熟期に求められるフィンテック
成熟期に差し掛かった携帯電話市場においては顧客の伸びも鈍化するため、自社の顧客を維持しつつ、他社から顧客を奪うという激しい競争を繰り広げることになります。
たとえ、低価格戦略で他社から顧客を奪えたとしても、その顧客を維持する基盤が必要になります。
そこで、少しでも顧客が他社への鞍替えするのを防ぐために、各社とも既存の顧客を囲い込む必要が出てきます。
そのためには、自社と契約していることで顧客に利便性を実感してもらうことが大切です。
フィンテックは銀行振込や証券投資、支払決済といったことが自分のスマートフォンで全て済むようになり、近くの金融機関に足を運ぶ必要がなくなります。
今までの常識を大きく覆す金融のあり方がフィンテック事業によって実現するのです。
この新しい金融のあり方が顧客の利便性を向上させます。
これによって、他社に同様のサービスを展開していたとしても今まで利用していた親近感も重なって、面倒な手続きをしてまで他社に移ろうとは思わなくなります。
以上のように顧客の生活に密着したフィンテック事業は携帯電話キャリア各社にとって顧客離れを防ぎ、維持し続けるための大切な基盤なのです。
大手キャリアフィンテック事業の状況
大手キャリア4社の金融事業の状況をまとめると以下のとおりです。
キャリア名 | 銀行事業 | 証券・資産運用 | 決済事業 |
NTTドコモ | 新生銀行(融資のみ) | THEO+ docomo | iD |
KDDI・au | じぶん銀行 | カブドットコム証券
KDDIアセットマネジメント |
ウェブマネー |
ソフトバンク | ジャパンネット銀行 | One Tap BUY | PayPay |
楽天 | 楽天銀行 | 楽天証券 | 楽天Edy |
以上のように大手キャリア各社はフィンテック事業の基盤整備を行い、競争に勝つための環境を整えてきています。
各社足並みがそろい、競争は更に激化する状況です。
まとめ
大手キャリア4社のフィンテック事業への取り組みによって、私たちはデジタル社会において新しい金融サービスの提供とその利便性を共有することができるでしょう。
また、これによって今まで実店舗で営業してきた都市銀行や地方銀行も顧客を奪われかねない状況です。
これら実店舗のある銀行も今金融のデジタル化を進め、金融市場の激しい競争に耐えられる体力をつけている状況です。
このように、携帯4大キャリアのフィンテック事業は日本の金融システムを根本から変えていく大きなうねりとなっていくことに間違いありません。
いずれにしても、フィンテックが私たちの生活をより便利なものしていくことを期待しています。