日本経済新聞に掲載されている、味の素株式会社 会長 伊藤雅俊さんのコラム「私の履歴書」にとても良い話が掲載されていましたのでご紹介したいと思います。
ある1通の手紙から・・・
1990年(平成2年)伊藤さんが冷凍食品の担当副部長になった頃、味の素が子供たちに喜んでもらおうと丸いアンパンマンの形状をしたフライドポテトを製造・販売したところ、それがヒットしたそうです。
そののち、その商品を利用している幼児から次のような手紙が届きました。
「アンパンマンにはともだちがいます。ひとりだけだとかわいそうです。友だちをつくってください。」
当時アンパンマンの形状をしたフライドポテトしか入っておらず、他のキャラクターは入っていませんでした。
このような要望の手紙はこれ1通だけだったそうです。
味の素が取った行動は・・・
企業の理屈から行けば、商品の形状が異なるものが増えればそれだけ製造ラインが複雑になり、製造コストも上がるので、できるだけ単品大量生産したいというのが本音でしょう。
しかも要望としてあがってきた手紙は1通だけです。
しかし、伊藤さんは「これがお客さんの声だ」と受け止め、「ドキンちゃん」や「しょくぱんまん」の形状のフライドポテトも作って1人の幼児の要望に応えたそうです。
これって、とても凄いことです!
感動しました!
普通なら見過ごしてしまいそうな意見を伊藤さんはすくい上げて、商品を改良したのです。
そして、次の手紙にも・・・
こうして、アンパンマンのキャラクターを増やして商品を改良した後、また別の子から手紙が来ました。
「ドキンちゃんが1つだけだったので、おねえちゃんにたべられた。もっとドキンちゃんをふやしてください。」
商品の袋によって入っているキャラクターの個数に多少ばらつきがあり、この子の元に行った商品の袋の中にはドキンちゃんのフライドポテトが1個しか入ってなかったようです。
この要望にも伊藤さんは応えました。
1個のサイズを小さくして袋に入る個数を増やすことでどの袋もキャラクターが2個以上入っているようにしたそうです。
食卓には笑顔が大切
伊藤さんはコラムの中で、「子供たちを悲しませてはいけない」、「食卓には笑顔が大切だ」、「そのとおりだと思ったお客様の声にはその声が少ない段階でもいち早く対応する」と述べていらっしゃいます。
私はこれを見て、伊藤さんは「自分たちの作った商品はお客様に喜んでもらうもの、それが悲しませるようなものであっては商品のあり方としておかしい」と感じたのではないか?
だから、たった1通でも見過ごせなかったのだと思います。
そして、この1通の手紙の背後には何十人、何百人、何千人もの子供たちの要望が同じように詰まっていると伊藤さんは察知されたのでしょう。
「食卓には笑顔が大切」
このあり方が体に染み込んでいたからこそ、このような対応ができたのだと思うのです。
まとめ
情報洪水の世の中、人としての「あり方」、企業としての「あり方」がいっそう強く求められる時代になりました。
「あり方」がしっかり幹に据わっていないと周囲の情報で人の行動が、企業の行動がぶれてしまう。
それだけ、しっかりとした考え方を持って行動すれば必ず結果はついてくると感じました。
感動して、学びもあって、人の経験談は自分が体験したことのない世界へ連れて行ってくれる。
もっともっと、いろいろな人の体験談を聴いてみたいものですね!
出典:日本経済新聞 2019年3月16日 伊藤雅俊「私の履歴書」